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宇宙一統計ができない農学系M1の勉強用ブログ

2014年度統計検定1級 大問2(統計数理)((2)まで)

大問2(問題文)

連続型確率変数 X確率密度関数が、m>0として

\displaystyle
f(x)= \!\begin{cases}
\frac{1}{\Gamma(m)}x^{m-1}e^{-x} & (x>0) \\
0   & (x \le 0)
\end{cases}
で与えられるとき、 Xはパラメータ mのガンマ分布にしたがうという。ここで \Gamma(m)はガンマ関数を表し、 mが正の整数ならば \Gamma(m)=(m-1)!である。

(1)パラメータ mのガンマ分布のモーメント母関数は、 t<1に対して M_x(t)=(1-t)^{-m}であることを示せ。

(2)パラメータ mのガンマ分布の平均と分散をそれぞれ求めよ。

(3) n+1個の確率変数 X_1,...,X_{n+1}が、それぞれ互いに独立に m=1のガンマ分布に従うとき、
 T=X_1+...+X_n+X_{n+1}
および、 Y_1=X_1/T, Y_2=(X_!+X_2)/T,...,Y_n=(X_1+...+X_n)/Tとする。このとき、 Tの確率分布は何か。
また、(Y_1,...,Y_n)と Tとは互いに独立であることを示せ。

(4)上問(3)で定義された (Y_1,...,Y_n)の同時分布は、互いに独立に区間(0,1)上の一様分布に従う確率変数 U_1,...,U_nの順序統計量[tex: U_{(1)}<...

解説

(1)

モーメント母関数の定義 M_X(t)=E(e^{tX})を利用して計算すればよいです。
このモーメント母関数の定義がなぜこうなるのか、というお話ですが、テイラー展開した時のn次の項がn次のモーメントに対応しているようです(説明になっているようではぐらかしている)。なので tには0近傍で求めるという以外にあまり意味はないです。詳しくはこの辺(http://www.aandt.co.jp/jpn/qc/basic/bokansu.htm)などを参考にして下さい。
説明はこの辺で終わりにして愚直に計算します。
{\displaystyle
\begin{eqnarray*}
M_X(t)
&=&\int_0^\infty \frac{1}{\Gamma(m)}x^{m-1}e^{-x} e^{tx}dx\\
&=&\int_0^\infty \frac{1}{\Gamma(m)}x^{m-1}e^{-(1-t)x}dx\\
\end{eqnarray*}
}
ここで (1-t)x=yと置換すると
{\displaystyle
\begin{eqnarray*}
\int_0^\infty \frac{1}{\Gamma(m)}x^{m-1}e^{-(1-t)x}dx
&=&\int_0^\infty \frac{1}{\Gamma(m)} \left(\frac{y}{1-t}\right)^{m-1} e^{-y}\frac{dy}{1-t}\\
&=&\frac{1}{(1-y)^m}\color{red}{\int_0^\infty \frac{1}{\Gamma(m)} y^{m-1} e^{-y}dy}\\
&=&(1-y)^{-m}
\end{eqnarray*}
}
赤い部分はガンマ分布そのものを表しますから、全区間での積分結果は1になります。
したがってパラメータ mのガンマ分布のモーメント母関数は、 t<1に対して M_x(t)=(1-t)^{-m}と示せます。

(2)

モーメント母関数をtについて微分して求めるのが一番楽だと思いますが、別に平均と分散の定義通りに求めても良いと思います。両方書いときますね。

(i)モーメント母関数を利用する場合

平均 E(X)はモーメント母関数をtについて微分してt=0における傾きを出せばよく(1次のモーメント)、
 E(X)=M_X'(0)=(-m)*(-1)*(1-0)^{-m-1}=m
分散V(X)は分散の定義より V(X)=E(X^2)-E(X)^2から、E(X^2)を求めればよく、これはモーメント母関数のtに関する2階微分(2次のモーメント)なので
 E(X^2)=M_X''(0)=(-m)*(-m-1)*(-1)*(-1)*(1-0)^{-m-2}=m(m+1)
したがって、 V(X)=E(X^2)-E(X)^2=m(m+1)-m^2=m
よって平均・分散ともに mと求まります。

(ii)平均と分散の定義から直接求める場合

平均の定義より E(X)=\inf_0^\infty x f(x)dx (f(x)は確率密度関数)
これにガンマ分布を代入して
{\displaystyle
\begin{eqnarray*}
E(X)
&=&\inf_0^\infty x f(x)dx\\
&=&\inf_0^\infty x \frac{1}{\Gamma(m)}x^{m-1}e^{-x} dx\\
&=&\inf_0^\infty \frac{1}{\Gamma(m)}x^{m}e^{-x} dx\\
&=&\inf_0^\infty \frac{m}{\Gamma(m+1)}x^{m}e^{-x} dx\\
&=&m \color{red}{\inf_0^\infty \frac{1}{\Gamma(m+1)}x^{m}e^{-x} dx}\\
&=&m
\end{eqnarray*}
}
赤字の部分はパラメータm+1のガンマ分布の非零である全区間における積分なので1になり、このように平均E(X)を求めることができます。
分散は E(X^2)を求めたいので
{\displaystyle
\begin{eqnarray*}
E(X)
&=&\inf_0^\infty x^2 f(x)dx\\
&=&\inf_0^\infty x^2 \frac{1}{\Gamma(m)}x^{m-1}e^{-x} dx\\
&=&\inf_0^\infty \frac{1}{\Gamma(m)}x^{m+1}e^{-x} dx\\
&=&\inf_0^\infty \frac{m(m+1)}{\Gamma(m+2)}x^{m+1}e^{-x} dx\\
&=&m(m+1) \color{red}{\inf_0^\infty \frac{1}{\Gamma(m+1)}x^{m}e^{-x} dx}\\
&=&m(m+1)
\end{eqnarray*}
}
赤字の部分はパラメータm+2のガンマ分布の非零である全区間における積分なので1になり、このように E(X^2)を求めることができます。
あとは V(X)=E(X^2)-E(X)^2=m(m+1)-m^2=mと求まります。

(3)以降は明日時間を見つけてやります。